札幌市円山動物園のマレーグマ死亡事件 職員処分で頻発する死亡事故の再発を防げるとは思えない

札幌市の円山動物園でマレーグマの繁殖の為にメス(ハッピイ)とオス(ウメキチ)を慣れさせるための同居訓練中にオスが別のメス(ウッチー)に攻撃して死亡させてしまった事件について、札幌市は担当職員を処分する方針とのこと。

マレーグマ「ウッチー」の死亡事故について
http://www.city.sapporo.jp/zoo/malayansunbear.html
マレーグマのメス「ウッチ―」の死亡原因と経緯について
https://www.city.sapporo.jp/zoo/topics2-804.html
同居訓練のマレーグマの死、動物園職員を処分へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150822-00050076-yom-soci


マレーグマのメスの死亡原因

メスとオスの繁殖前に数十分~1時間程度の顔合わせをしてお互いに慣れさせたり相性を確認したりというのは、テレビ番組などでもよく目にするので動物園では一般的だということは何となくわかる。

今回、不幸にもマレーグマのメスが死亡してしまった原因は、上記リンク先の報告書を読む限りでは

  • 同居訓練中に何度か闘争が発生しているのに繰り返し同居訓練を行ったこと
  • 同居訓練中の見張りの担当職員は(記録にある限りでは)1~2名(担当職員のみ、または「担当職員と獣医 or 係長」)だけだったこと
  • メスが致命傷(肋骨の骨折と、その骨による内蔵の負傷)を負ってしまうような闘争を(闘争と気付かずに)止めなかったこと
  • メスが致命傷を負ったことに気付かなかったこと

といった点だ。それぞれのポイントで何らかの対策が行われていれば少なくとも死亡には至らなかったかもしれないとは思う。

担当職員の知識・経験は十分だったのか?

ここで気になってくるのは、担当職員に動物の飼育や繁殖に関する十分な知識や経験があったのか?という点だ。

円山動物園は札幌市の施設であり勤務している人は札幌市の公務員なので、突然の移動で事務系の部署から動物園の飼育担当になることだってあり得る。少なくとも獣医学部卒であれば獣医師枠での採用になると考えるのが自然なので、担当職員は総合職採用だった可能性が高く専門知識は持っていなかったのではないかと思われる。

「専門外だろうが何だろうが仕事なんだからしっかりやれ!責任を取れ!」というのは簡単だけど、金魚や亀のお世話をするのと動物園にいるような特殊な動物の世話をするのは訳が違う。分からないからと言って最初から投げやりな姿勢で仕事をしても良いかと言われるとそれは絶対に間違っているが、全くの素人がまともに動物の飼育や繁殖をできるとは個人的には思えない。

わざわざ動物園で6年間も専門教育を受けている獣医師を採用しているということからも、多少研修を受けた程度でどうにかなる話ではないのは間違いないだろう。

同居訓練にもっと人員を避けなかったのか?

暴れ始めたら簡単に止めることはできないマレーグマの同居訓練というマレーグマにも人間にも危険な仕事を、担当職員・獣医師・係長のたった3人で担当していたというのは明らかに人員不足であると思う(その他の職員は無線で呼びかけたときのみヘルプに入る体制だった)。

ただ、円山動物園には他の動物も沢山いるわけで、その動物達の飼育のことを考えるとマレーグマの同居訓練に人員を割くほどの余裕がなかったのだろう。

何故、過去の繁殖実績を元にマニュアルは作らなかったのか?

同居訓練中に危険な状況になったら止めるべきなのは明らかだけど、中止基準は設けられていなかったらしい。同居訓練に詳しい人間であればマニュアルなんてなくても即ストップできても、素人同然の担当職員だけでは判断が付かないということは十分に考えられる(じゃれているのか闘争なのかが分かりづらいのではないか?)。

以下の「円山動物園が受賞した繁殖賞」によると小型の動物だけでなくヒヒやワニなどの暴れたら危険だと思われる動物の繁殖を行っていること、更にはコディアックグマというクマの繁殖の実績も確認できることから、同居訓練は過去に何度か実施されたことがあるのだろう。

円山動物園が受賞した繁殖賞
http://www.city.sapporo.jp/ZOO/others/prize/index.html

そのような繁殖の実績がありながら、同居訓練の際の危険防止のための基準が設けられていなかったのは何故なのか?

円山動物園に死亡事故が多い原因は人員不足ではないか?

動物園では今回の事故を受けて再発防止に努めるとしているけど、実は円山動物園では老衰や病気以外による動物の死亡が相次いでいる。

コツメカワウソの雄「ずんだ」が死亡しました
※平成27年(2015年)5月3日にプールの濾過取水口に右後肢を吸い込まれて溺死
http://www.city.sapporo.jp/zoo/topics2-734.html
マレーバクの「トーヤ」が死亡しました
※平成26年(2014年)05月28日にプールの壁と鉄先との間に左顎を引っ掛けて溺死
http://www.city.sapporo.jp/zoo/topics2-570.html
ダイアナモンキーの「ビット」が死亡しました
※2014年1月15日(水)に他個体との闘争の結果、死亡
http://www.city.sapporo.jp/zoo/daianamonky.html

いずれも、普段から注意深く施設内を巡回・点検したりしていれば防げた可能性は高い。特に溺死の2件については完全に施設の不備によるものである。

こういった死亡事故が改善される気配が一向にないことからも、円山動物園はそもそも人員が足りていないのではないだろうか?人が少ないせいで各動物の飼育や観察、施設の点検などが疎かになれば、事故は発生して当然だと思う。先述の過去の繁殖実績の際にマニュアルが作られていないのもその辺りに理由がありそうだ。

担当職員(と関係者)を処分して終わる問題ではない

ニュースでの報道によると札幌市は職員を処分するつもりらしいが、それだけで問題が解決するとは到底思えない。

そもそも人が足りていない(と思われる)状態で全ての仕事をこなそうとすると仕事の質は必然的に下がるので、その結果が繰り返し発生する死亡事故となって表に現れているのだろう。確かに担当職員への注意は必要だと思うけど、今回の処分の発表については対外的な批判を沈めるためのパフォーマンスやトカゲの尻尾切りにしか見えない。

現状を改善しようと思ったら、職員への飼育や繁殖に関する教育を徹底するのは前提として、職員の数を増やすもしくは動物の数を減らす等して動物園としての飼育能力のキャパオーバーが起きないようにするべきだ。

担当者を処分して原因究明と再発防止策をまとめたらとりあえず今回の事件は収まるかもしれない。しかし、動物はこれからも動物園で生活をし続けなければならないので、これ以上悲惨な事故を起こさないための抜本的な解決策を札幌市主導で考えていかなければならないのではないだろうか。



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