大阪市天王寺区役所が無償でデザイナー募集を行った理由について

大阪市天王寺区役所が無報酬で広報デザイナーを募集したことが約1ヶ月前に話題となったが、3月1日付けで企画が中止となったようだ。

「天王寺区デザインパートナー」募集の中止及びワークショップ~デザインと天王寺~の開催について
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/tennoji/0000207303.html

募集開始当初から「無報酬でデザイナーを募集しようなんてデザイン業界をバカにしている!」という批判が殺到していたようなので企画中止という結末には特別驚いたりはしないけれど、何故デザイナーを無償で募集しようなんて企画が誕生してしまったのか、その点について考えてみたいと思う。

例えば今回の企画、デザイナー(デザイン)募集ではなく職員の募集だったとしたらどんな印象を受けるだろうか。「1年間無償で働いて下さい!市役所で1年働いた経歴ができるのでその後の就職活動に有利ですよ!!」と言われて応募してくる人は果たしているのか。たぶん誰も応募しないだろうし、そもそもボランティアでもない人を無償で働かせようという馬鹿げた発想は最初から出て来ないだろう。

もう一つ例として、市の施設の修繕を行う業者を募集したと考えてみたい。「1年間無償で働いて下さい!市役所の業務を請け負った経歴ができるのでその後の営業活動や業務に有利ですよ!!」と言われて応募してくる業者は果たしているのか(材料費等は実費支払いと仮定)。こちらの場合も応募がないどころか、こんな企画を行う人間はそもそもいないはずだ。

無償のデザイナー募集と例で挙げた職員・業者の募集、全く同じことであるはずのにデザイナー募集は(企画段階では)許されて職員や業者の募集は何故許されないのか。その差はそれぞれのサービスの過程がわかりやすいかどうかという点にあると思う。

職員が事務仕事をするところや業者が施設の修繕を行う様子というのは非常に想像しやすい。事務仕事というのは1日中デスクに座って書類作成などを行うことであり、施設の修繕というのは職人が壁に塗料を塗る等を行うことであるというのは多くの人が簡単にイメージできる。そのため、これらの仕事には人件費が発生するということも容易に想像できるので、無償で募集しようなんて発想には至らない。

一方で、デザインを作成する際の過程を理解している人はあまり多くないだろう。デザインを仕事にしている人やそういった人と深く関わりのある人でなければ、デザインを作成するという仕事が具体的にどういった作業を指すのかはほとんど想像できない。そのため、デザインの仕事に人件費が発生するかのかどうかいまいちピンと来ない。加えて、「デサイン作成=感覚、フィーリング」というイメージがあり大した労力をかけなくとも簡単にデザインができ上がるような気もする。そういったことが積み重なった結果、「もともとタダ同然なんだから無償で募集しても問題ないよね?」という誤った企画が誕生してしまったのだと思う。

もちろん、デザイン作成の過程を理解していない人が100%悪いと言いたいわけではない。素人ならその中身がどうなっているのかなんて到底わからないだろうし、デザイン業界側もデザイン完成までのブラックボックスを素人相手にできるだけ明確に説明する努力を忘れてはならない。

ただ、いずれにせよ(デザイン作成に限ったことではなく)人を働かせればその分の費用は必ず発生するのだから、タダで人を働かせようなんて都合の良いことは考えるのは止めるべきだと思う。



   スポンサーリンク